自動運転はEVのインテリジェント化にとって重要な発展方向であり、強いセンシング能力を備えたレーザーレーダーはL2+以上のレベルの自動運転に欠かせないハードウェア設備です。NOVOSENSEのシングルチャネル高速ゲートドライバチップNSD2017は、レーザーレーダートランスミッタでGaN HEMT(高電子移動度トランジスタ)を駆動するために設計され、レーザーレーダーアプリケーションにおけるさまざまな課題解決に貢献します。
1)レーザーレーダーシステム構造の紹介
自動運転で使用されるレーザーレーダーは通常、DToF(Direct Time-of-Flight)レンジング方法を採用しており、即ちレーザーの飛行時間を直接測定することで距離の測定と地図のイメージングを行います。下図はDToFレーザーレーダーシステムの一般的な構造であり、その中でシグナル処理ユニットはレーザー発信機が光パルスを発した時刻とレーザー受信機が光パルスを受信した時刻を記録することで、時間間隔と光速に基づいて目標距離を算出することができます。
DToFレーザーレーダーの一般的なシステム
レーザーレーダーは高解像度と広い検出範囲を実現するために、極めて狭いレーザーパルス幅、極めて速いレーザーパルス周波数と極めて高いレーザーパルスパワーが必要で、これはレーザー送信機のパワースイッチングデバイスの性能により高い要求を提出しています。伝統的なSi MOSFETに比べ、GaN HEMTはより優れたスイッチング特性を持ち、DToFレーザーレーダーアプリケーションに非常に適しています。GaN HEMTの性能パーフォーマンスは高速、高駆動能力と高信頼性のGaNゲート駆動チップに依存しており、NSD2017はその優れた製品特性により、レーザーレーダーにおけるGaN HEMTの優位性を十分に発揮できます。
2)NSD2017の製品特性
-おすすめの動作電圧:4.75V~5.25V
-ソースシンク電流ピーク値:7A/5A
-最小入力パルス幅:1.25ns
-伝送遅延:2.6ns
-パルス幅の歪み:300ps
-上昇時間@220pF 負荷:650ps
-下降時間@220pF 負荷:850ps
-パッケージ:DFN6(2mm*2mm)、WLCSP(1.2mm*0.8mm)
-AEC-Q100認証に準拠
-同相と反転入力ピンは、極めて狭いパルス幅を生成するために使用することができる
-UVLO、OTSD保護を備えている
NSD2017の一般的なアプリケーションブロック図
3)NSD2017の主要機能は、レーザーレーダーアプリケーションの課題に対応
1.大電流駆動能力は、レーザーレーダーの長距離検出可能に
レーザーレーダーの長距離検出能力により、自動運転車両は障害物を事前に発見し、適時に回避することができ、自動運転速度の上限を向上することができます。より長い検出距離を実現するためには、通常、人間の目を傷つけないことを前提に、より大きいパワーのレーザー発信機を採用すべきです。これは、より大きな電流のGaN HEMTとより高い駆動能力のある駆動チップが必要です。NOVOSENSEのNSD2017は、7Aピークソース電流と5Aシンク電流の能力を備えており、大電流GaN HEMTを駆動することができ、それにより高いピークレーザーパワーを生成し、遠距離検出を実現できます。
2. レーザーレーダーの高いレンジング精度要求を満たす極めて狭い入力パルス幅
DToFレーザーレーダーは、パルスレーザーの送信と受信の時間間隔を測定することでレンジングを実現するが、隣接する2つのターゲットからの反射光パルスが重なると、システムはこの隣接する2つのターゲットの距離情報を識別することができなくなります。センチメートルレベルの距離解像度の要求を満たすために、レーザーレーダーは極めて狭い光パルス幅が必要で、通常数ナノ秒と低く、高速な立ち上がりエッジと立ち下がりエッジを持つ必要があります。NSD2017の最小入力パルス幅の標準値はわずか1.25nsであり、かつオンとオフのパスにおける優れた遅延整合を備え、入力から出力までのパルス幅歪みは300psと低いです。また、負荷220nFの場合、NSD2017の標準的な立ち上がり時間は650ps、標準的な立ち下がり時間はの850psであり、より狭いパルスレーザーを生成もに容易です。
NSD2017最小入力パルス幅テスト、Ch1は入力波形、Ch2は出力波形
3. 小型パッケージと高周波スイッチは、レーザーレーダーの角度分解能とドット周波数性能を最適化
レーザーレーダーの角度分解能は、走査中に隣接する2つのレーザードットの間の角度差を表し、ドット周波数は3D視野内で1秒間に放出されるドレーザードットの数を表します。一般的に、レーザーレーダーの角度分解能が小さいほど、隣接する点群の密度は高くなり、点周波数が高いほどレーザーレーダーのセンシング能力は向上します。より高い角度分解能とドット周波数を実現するために、レーザーレーダーはより多くのレーザー送信機を配置する必要があり、したがって駆動チップのパッケージサイズに対してより高い要求が提出されています。NSD2017の車載グレードチップは、DFN(2mm*2mm)パッケージだけでなく、より小さいサイズのWLCSP(1.2mm*0.8mm)パッケージも提供できます。NSD2017は最大60MHzのスイッチング周波数と標準値2.6nsの伝送遅延をサポートし、システム制御ループの十分な高速応答時間を保証し、レーザーレーダーのドット周波数性能を向上にも貢献します。
NSD2017伝送遅延テスト、Ch1は入力波形、Ch2は出力波形
4.レーザーレーダーの安全性と信頼性を保証する強力なアンチジャミング能力
レーザエミッタでは、GaN HEMTの高速スイッチングのために、ゲートドライバチップ外部のゲート直列抵抗は通常ゼロに設定されています。ゲートドライバチップのピークソース電流とシンク電流は、チップのパッケージ寄生インダクタンスとPCB寄生インダクタンスを介し、チップ内部のVDDとGNDに比較的大きなジッタを発生させ、駆動回路の動作異常を引き起こす可能性があります。NSD2017は、パッケージの寄生インダクタンスを最適化し、チップ内部にバイパスコンデンサを内蔵することで、ドライバ回路のロードによる高圧バリを効果的にフィルタリングし、それによりノイズ耐性を向上させています。また、NSD2017は、過温度保護と低電圧保護機能を備え、レーザーレーダーの安全かつ信頼性の高い動作を保証します。
4)まとめ
GaN HEMTゲートドライバNSD2017は、高いスイッチング周波数、低い伝送遅延、極めて狭いパルス幅、低い歪み、強い駆動能力と妨害対処などの特性を備えており、小型の車載グレードパッケージを採用し、レーザーレーダーの各アプリケーションの課題解決へ貢献し、感知能力を向上させ、安全で信頼できる運行を確保することができます。